ストレスが原因で腰痛に!?注意すべき腰痛のサインや改善のコツをご紹介
院長監修記事
梅林 猛
東京脊椎クリニック院長/日本脳神経外科学会専門医/日本脊髄学会指導医
医療法人メディカルフロンティアでは脊椎手術に特化した医療施設(東京脊椎クリニック)を運営しています。その施設の責任者である梅林猛医師監修の下、リハビリテーションや脊椎疾患、手術術式についても寄稿していきます。
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腰痛は多くの人が悩まされる疾患の一つであり、厚生労働省の調査では、女性は肩こりに次いで二番目に、男性では一番症状を訴える人の割合が多いという結果が出ています。
腰痛にも色々種類があり、急性のぎっくり腰のような一時的に通常の生活が難しくなるような腰痛はもちろんですが、長引く慢性の腰痛も辛いものがあります。
今回は、慢性腰痛の原因、改善法やその注意点などを紹介します。
【目次】
■慢性腰痛とは?原因や特徴を紹介
■内臓や骨に原因がある可能性もあるため要注意
■ストレス性の腰痛を改善するためには?悪循環から抜け出すコツをご紹介
■まとめ
慢性腰痛とは?原因や特徴を紹介
まず慢性腰痛とは、腰の痛みが三カ月以上続く状態、あるいは痛みが良くなったり悪くなったりする状態を指します。
しかし、病院で検査をしても原因がはっきりしない場合も多いと言われています。
今回はその中でも原因の一つとして考えられているストレスについてご紹介します。
●長引く腰痛の原因はストレスにあった!?ストレスと腰痛の関係をご紹介
・ストレスと腰痛の関係について
ストレスは脳機能に影響を及ぼし、その結果身体に様々な不調が現れます。
睡眠障害やお腹の不調などは、ストレスの影響として多くの人が考えるのではないでしょうか。
実は腰痛もストレスによって引き起こされることがあります。
そのメカニズムの一つとして考えられているのは、血行不良です。
心理的ストレスにより冠動脈が一時的に痙攣をおこし、それによって動悸や息苦しさが起こることがあります。
これと同じようにストレスにより腰の筋肉の血流が悪くなり腰痛を起こすと考えられています。
また、腰の器質的な問題よりも、脳の痛みを感じるシステムの不調により痛みが引き起こされていることもあります。
通常痛みの信号が脳に伝わると、脳からドーパミンという神経伝達物質が放出され、鎮痛剤にも使われるμオピオイドという物質が脳内で大量に放出されます。
その結果、痛みが緩和されたり、感じにくくなるのです。
しかし、ストレスが脳機能に影響を与えた結果、ドーパミンが放出されにくくなり、痛みが長引いたり、わずかな痛みも強く感じるようになってしまうのです。
・ストレスによる悪循環で腰痛が悪化することも
このようにストレスは腰痛を悪化させる原因となりますが、腰痛そのものがまたストレスの原因となり、悪循環に陥ってしまうケースもあります。
上で述べたように、痛みの緩和にはドーパミンの放出が肝心ですが、痛みによってストレスを感じた結果、よりドーパミンが放出されにくくなり、それによりまた痛みを感じるという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
また、痛みを感じる恐怖や不安から、コルセットを常用するなど腰を過剰に守るようになり、腰痛の回復に悪影響を及ぼすこともあります。
・慢性的なストレスのサインをチェック
慢性的なストレスのサインは色々あります。
寝つきが悪い、イライラする、不安を感じる、食欲不振などが代表的に挙げられます。
また、医療機関ではBS−POPという簡易問診票を用いてストレスと痛みの関連を評価するということが行われています。
この問診票は、医療従事者が患者さんを見てチェックするものと患者さん自身が記入するものがあります。
そしてその二つを合わせて、総合的に診断が下されます。
★腰椎椎間板ヘルニアとは(原因・症状・診断検査・治療法など)
★首が痛い・腰が痛い・手足がしびれる、尿や便が出にくい(膀胱直腸障害)などの症状受診の基準
内臓や骨に原因がある可能性もあるため要注意
ここまで、ストレスによって引き起こされる腰痛について紹介してきましたが、他にも腰痛の原因が潜んでいる場合があります。
ストレスのサインがあるからと言って、独断でストレスが原因であると特定することは危険です。
●知っておきたい、よくある腰痛の種類
また、腰痛には原因が特定できて場合によっては手術が必要な種類とこれまで述べたストレスが原因のような原因を特定できない非特異的腰痛があります。
そして、実は腰痛の約85%はこの非特異的腰痛であるという調査もあります。
とはいえ、残りの約15%は原因が特定可能で、手術などが必要な場合もあるのです。
・①腰の骨や筋肉などに異常がある場合
腰の骨に異常がある場合の代表的な例は、腰椎圧迫骨折、脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどが挙げられます。
これらの場合は薬剤やコルセットを用いた治療や、重い場合は手術の適用もあります。
また、腰の筋肉の使いすぎ、いわゆる筋肉痛が原因となる筋性腰痛もあります。
この場合は痛い場所が特定でき、揉みほぐすことで良くなることが特徴です。
・②ほかの病気などによって生じている場合
腰痛の原因の割合としては低いですが、他の臓器の病気によって腰痛が引き起こされていることもあるので注意が必要です。
内臓の神経が腰に伸びていることもあり、慢性すい炎、腎う腎炎、尿路結石、慢性の十二指腸潰瘍、子宮内膜症などが腰痛の原因である場合もあります。
また、がんが原因であることもあるため、単なる腰痛だからと放置しないようにしましょう。
・③心因性など非器質性の場合
ここまで紹介してきたような身体の機能の不調が原因ではなく、ストレスなど精神的な原因で腰痛が起こることもあります。
このような腰痛は原因を特定することが難しい非特異的腰痛の一種です。
ストレス性の腰痛を改善するためには?悪循環から抜け出すコツをご紹介
病院にかかったけれど原因が特定できなかった、ストレスが原因である可能性を指摘されたなどの場合、どのような対処法があるのでしょうか。
●ストレス改善にきく3つの処方箋
・十分な睡眠をとる
ストレス改善の基本的な対処法の一つとして、きちんと睡眠をとるということが挙げられます。
寝つきが悪い時はアロマを焚いたり、好きな音楽を聞くなど自分なりのリラックス法を見つけましょう。
・適度な運動
三カ月以上続く慢性腰痛の場合、ずっと安静にしているよりも、普段通り生活し、適度な運動をした法が良いことがわかっています。
ウォーキングやストレッチなど、様子を見ながら軽い運動を取り入れてみましょう。
・認知行動療法
認知行動療法は精神治療の手法の一つで、気持ちが動揺した時に浮かんだ考えと現実を比較することによって、思考のバランスをとる治療です。
例えば腰痛によって仕事や家事などが進まなかったことを責める思考になった時に、現実にできたことを認識することによって気持ちを切り替えることができるでしょう。
本来はカウンセラーなどの専門家と行うものですが、この治療法の考え方がストレスを軽減するヒントになるかもしれません。
●腰痛改善には落とし穴が!?気を付けるべき注意点
・すぐにマッサージや整体に行く
マッサージや整体で一時的に改善される場合もありますが、骨や内臓の疾患原因であることもあるため、まずは整形外科で検査をしましょう。
・自己流の筋トレをする
背筋や腹筋などの筋肉をつけることは腰痛予防に重要ですが、自己流で行うと逆に痛めてしまう場合もあるので注意が必要です。
上で述べたように、軽い運動自体は慢性腰痛の改善に効果的な療法ですが、筋トレなどの負荷の大きい運動を行う際はかかりつけ医に相談の上、様子をみながら行いましょう。
★ペインクリニックとは(概要、痛みとは、適応疾患、治療法等)
★首下がり症候群とは(原因・症状経過・診断検査・治療法など)
まとめ
ここまでストレスと腰痛の関係について紹介してきました。
腰痛は日本人の多くが悩まされている不調ですが、原因を特定できない場合が多くあります。
そう言った非特異的腰痛原因の一つとしてストレスの可能性があります。
ストレスは脳の痛みを感じるメカニズムに不調を引き起こし、痛みを強く感じるようになります。
そして、その痛み自体がストレスとなり、負のループに陥ってしまう場合があります。
このように、ストレスが原因で腰痛に悩まされている場合は、睡眠をしっかりとるなどの対策を行ってみましょう。
ただし、骨や内臓の疾患が腰痛の原因である場合もあるため、自分で判断せずにまずは整形外科で診断をうけるようにしましょう。
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