「睡眠時無呼吸症候群」で「息が止まっている」指摘も52・7%がしばらく様子見選択「いびき・無呼吸」を放置してしまう人が多い本当の理由
「睡眠時無呼吸症候群」で「息が止まっている」指摘も52・7%がしばらく様子見選択
https://news.yahoo.co.jp/articles/7b9927bdae342b79e9eb7189d354bbe3653fa091
Yahooニュース
このようなYahooニュースがありました。
「いびきがうるさいよ」
「寝ているとき、息が止まっていたよ」
こうした指摘を、家族やパートナーから受けたことがある方は少なくありません。ところが実際には、その言葉をきっかけにすぐ医療機関へ相談する人は、まだ多数派ではないようです。
今回はこのニュースをふまえて実際の診察で感じたことや参考文献を踏まえていびきや睡眠時無呼吸に関する本人の意識につて検証してみました。
この記事の目次
無呼吸を指摘されても多くの方が様子見という現実

2026年3月に公表された一般社団法人いびき無呼吸改善協会の300人調査では、自分や身近な人が睡眠中に息が止まっているとわかった場合でも、52.7%が「しばらく様子を見る」と回答しました。一方で、「すぐに専門の医療機関の受診を勧める」と答えた人は25.3%にとどまっています。つまり、無呼吸の可能性という比較的強いサインがあっても、半数以上はすぐには動かない、という現実が見えてきます。
この結果は、医療現場の感覚とも大きくはズレていません。実際、睡眠時無呼吸症候群は「病気としての危険性」は知られていても、「自分ごととして受診につなげる」段階で止まってしまいやすい病気です。今回の調査でも、睡眠時無呼吸症候群を放置した際のリスクとして、心筋梗塞・狭心症、脳卒中・脳梗塞、居眠り運転などの事故を挙げる人が多く、重症化リスクの認知自体は一定程度広がっていることが示されています。にもかかわらず、行動としては様子見が多い。このギャップこそ、いびき・無呼吸診療における最大の課題のひとつです。
「息が止まっているかもしれない」と言われても受診を後回しにしてしまう理由
ひとつは、夜の異常を本人が自覚しにくいことです。睡眠時無呼吸は、眠っている間に起こるため、本人には「苦しくて起き上がる」ような強い自覚がないまま進行することがあります。日本呼吸器学会は、睡眠時無呼吸症候群の症状として、いびき、夜間頻尿、日中の眠気、起床時の頭痛などを挙げています。しかし、これらは日常でよくある不調とも重なりやすく、「疲れているだけ」「年齢のせい」「最近忙しいから」と片付けられがちです。
実際、今回の調査でも、症状として最も多く認識されていたのは「寝ている間の呼吸停止」や「大音量のいびき」でしたが、起床時の頭痛や頻尿など、周辺症状の認知は高くありませんでした。つまり、「無呼吸」や「大きないびき」は知っていても、それ以外のサインを病気として結び付けられていない人が多い可能性があります。これは受診の遅れにつながりやすいポイントです。
もうひとつの理由は、セルフケアで何とかなるのではないかという期待です。調査では、睡眠時無呼吸症候群の改善策として、医療機関での治療だけでなく、ダイエット、枕の高さ調整、横向き寝、鼻腔拡張テープなどを有効だと思う回答も目立ちました。もちろん、体位の工夫や減量が助けになるケースはあります。日本呼吸器学会も、肥満がある場合には減量が重要であり、ごく軽症では側臥位、つまり横向きで改善する場合があるとしています。
ただし、ここで大事なのは、セルフケアと診断は別物だということです。枕を変える、横向きに寝る、鼻の通りを良くする、といった工夫で一時的にいびきが軽く見えることはありますが、それで本当に無呼吸が改善しているかどうかは別問題です。日本呼吸器学会のQ&Aでも、肥満がある場合の減量は重要としつつ、減量だけで完治が困難なこともある、中等症以上や合併症を伴う場合にはCPAPが有効と明記しています。つまり、「少し静かになった気がする」ことと、「病気として安全な状態になった」ことは同義ではありません。
睡眠時無呼吸は「睡眠の質が悪いだけ」ではないという現実

睡眠時無呼吸は、単なる睡眠の質の問題で終わらない可能性があります。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、最も注意が必要な睡眠関連疾患として閉塞性睡眠時無呼吸が挙げられ、睡眠休養感が低い、日中の眠気が強い場合は専門医療機関での検査が勧められるとしています。さらに同ガイドでは、閉塞性睡眠時無呼吸により、日中の眠気や居眠り、睡眠休養感の低下、不眠などが起こりうること、そして高血圧、脳卒中、心筋梗塞、心不全、糖尿病などの誘因になりうることが示されています。
日本循環器学会の2023年改訂ガイドラインでも、睡眠呼吸障害は、居眠り運転に起因する交通事故との関連から社会的関心が高いだけでなく、さまざまな循環器疾患に合併し、悪化に関与し、発症そのものにも関与することが示唆される重要なリスク因子と位置付けられています。つまり、「夜うるさい」だけの話ではなく、循環器領域から見ても見逃せない病態なのです。
受診のきっかけとして何を重視すべきか
まず強調したいのは、「息が止まっている」という第三者の証言は、かなり重要なサインだということです。本人は寝ているため、無呼吸を自分で把握するのは困難です。だからこそ、家族や同居者、旅行先で同室になった人、あるいは録音・録画などの情報は非常に有用です。
特に
・いびきが大きい
・静かになったと思ったら呼吸が止まっている
・その後、ガッと息を吸う
・日中に眠い
・朝起きてもすっきりしない
こうした組み合わせがあるなら、「そのうち受診」ではなく、「早めに相談」に切り替える価値があります。
肥満が原因とは限らない
次に重要なのは、太っていないから大丈夫、ではないという点です。調査では原因として「肥満」を挙げる回答が最多でしたし、実際に肥満は大きな危険因子です。しかし厚労省の睡眠ガイドでは、肥満だけでなく、下顎が小さい、下顎が後退している、首が短いなどの身体的特徴でも起こりうることが示されています。したがって、痩せている人、女性、若い人でも、「無呼吸っぽいなら評価が必要」という基本は変わりません。特に女性も閉経後に有病率が急増するとされており、「男性の病気」と決めつけるのは危険です。
受診先について迷う人もいます。今回の調査では、「呼吸器内科」が45.0%、「睡眠外来」が28.3%、「耳鼻咽喉科」が17.3%でした。実際には、地域や医療機関によって入口はさまざまですが、重要なのは睡眠時の呼吸評価ができる医療機関につながることです。日本呼吸器学会の一般向け情報でも、問診のうえで携帯型装置による簡易検査やPSGにより評価することが示されています。受診科に迷って動けなくなるより、「睡眠時無呼吸を診ているか」を確認して相談する方が現実的です。
無呼吸を伴ういびきは病気です。早めの受診を
今回のニュースの本質は、単に「52.7%が様子見だった」という数字そのものではありません。本当に重要なのは、多くの人が危険性を知っていても、受診という行動に移せていないということです。そしてその背景には、本人の自覚の乏しさ、セルフケアへの期待、受診の優先順位の低さ、どこに相談すればよいかの曖昧さが重なっています。
だからこそ、医療機関側も「怖い病気です」と言うだけでは足りません
「こんな症状なら相談していい」
「家族にこう言われたら検査の対象」
「いびきの大きさだけでなく、日中の眠気や朝の不調も手がかり」
「枕や横向き寝で様子を見る前に、まず評価」
こうした具体的な受診導線を丁寧に示すことが重要です。
いびきや無呼吸は、本人が困っていないように見えて、実は家族が先に異変に気づく病気です。だからこそ、「本人が平気そうだから大丈夫」ではなく、周囲の指摘を医学的なサインとして扱う視点が必要です。
もしパートナーや家族から「寝ているときに息が止まっている」と言われたなら、それは単なる寝相の話ではありません。「しばらく様子見」が当たり前になっている今だからこそ、早めの相談が価値を持つ。今回の調査結果は、そのことを改めて教えてくれています。
参考文献・出典
一般社団法人いびき無呼吸改善協会「『息が止まっている』とわかっていても半数以上が“様子見” ―睡眠時無呼吸症候群(SAS)300人調査」PR TIMES掲載。調査期間2026年3月9日~10日、有効回答300名。
一般社団法人日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)」一般向け解説。症状、診断、治療の基礎情報。
一般社団法人日本呼吸器学会「Q15. 夜、呼吸、いびきが止まると言われました。」一般向けQ&A。体位療法、減量、CPAPなどの考え方。
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」。閉塞性睡眠時無呼吸への注意喚起、日中の眠気や睡眠休養感低下時の受診勧奨。
日本循環器学会「2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」。睡眠呼吸障害と循環器疾患・事故リスクの整理。
記事監修者

上野いびきクリニック院長 菅谷 和之
2004年に藤田医科大学医学部を卒業後、東邦大学医療センター大森病院で麻酔科医として勤務を開始。その後、全国の市民病院や自由診療クリニックで臨床経験を重ね、これまでに2万件以上の全身麻酔を担当。2020年には脊椎専門の「東京脊椎クリニック」を設立し、2025年からは上野いびきクリニックの院長として勤務
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