閉塞性睡眠時無呼吸症候群、脳内の微小出血と関連か 治療の必要性を示唆 CNNニュース

新たな研究によると、閉塞(へいそく)性睡眠時無呼吸症候群を軽視すべきではなく、将来的に認知症やアルツハイマー病のリスクに影響を与える可能性があるという。 今回の研究では、中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、脳内の新たな微小出血のリスクを高めることが示された。 (CNN.co.jp)

このようなニュースがCNNニュースより報道されました。

本記事でも閉塞性睡眠時無呼吸症候群について詳しく解説しています。
睡眠時無呼吸症候のタイプ別分類とは

今回は脳内の微小出血とアルツハイマー病の関係について詳しく解説します。

アルツハイマー病の新しい視点

アルツハイマー病は、世界的に最も多い認知症の原因として知られています。日本でも高齢化とともに患者数は増え続け、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症に罹患するといわれています。その中でもアルツハイマー病は約7割を占める代表的な疾患です。

従来、アルツハイマー病は「アミロイドβ(ベータ)」や「タウ蛋白」の異常蓄積によって神経細胞が壊れる病気として説明されてきました。しかし、近年の研究ではそれに加えて、脳内の血管の変化や微小出血(microbleeds)が関与していることが明らかになってきています。

近年ではこのアミロイドβを分解する薬が開発され早期のアルツハイマー病治療薬として注目を集めました。ただしとんでもない高額な薬で日本では保険診療を圧迫しかねない懸念があります。

つまり、「神経変性」と「血管障害」という2つの要素が互いに影響し合いながら、アルツハイマー病を進行させているのです。

微小出血とは何か:MRIでしか見えない「小さな血の跡」

「脳内の出血」と聞くと、多くの方は脳出血やくも膜下出血のような大出血を想像するかもしれません。しかし、微小出血(cerebral microbleeds)はそれとはまったく異なります。

微小出血とは、脳の毛細血管や細い動脈がもろくなり、ごくわずかな血液が脳組織内に漏れ出た跡のことです。サイズは数ミリ程度で、症状を出さないことが多く、MRIの特殊な撮影法でようやく見つかるレベルです。

肉眼的には出血ではなく「鉄の沈着(ヘモジデリン)」として検出され、黒い点のように写ります。この黒い点が多いほど、脳の血管が傷んでいると考えられます。

微小出血が起きる原因:血管の老化とアミロイド血管症

微小出血の背景には、主に以下の2つの原因が知られています。
1.高血圧性血管障害
長年の高血圧により、小動脈の壁が厚く硬くなり、脆弱化して出血しやすくなります。特に脳深部(被殻、視床など)に多く見られます。

2.脳アミロイド血管症(Cerebral Amyloid Angiopathy: CAA)
アルツハイマー病と強く関係するのがこのタイプです。アミロイドβ蛋白が脳の血管壁に沈着し、血管がもろくなって破れやすくなるのです。 微小出血はこのCAAによって、大脳皮質や皮質下の白質(皮質下出血)に出現することが多く、MRIでの分布から原因を推測することも可能です。

微小出血とアルツハイマー病の関係:因果関係の「双方向性」

研究の進展により、微小出血とアルツハイマー病の間には双方向的な関係があることが明らかになってきました。

1. アミロイドβが血管を傷つけ、微小出血を起こす

アルツハイマー病では、脳内にアミロイドβが過剰に蓄積します。このアミロイドβは本来、神経細胞間に沈着しますが、同時に血管の壁にも沈着して「脳アミロイド血管症(CAA)」を引き起こすことがあります。

結果として、血管の構造が弱くなり、微小出血が発生します。つまり、アルツハイマー病が原因で脳内微小出血が起こるのです。

2. 微小出血が神経細胞への酸素供給を妨げ、認知機能を悪化させる

一方で、微小出血そのものが脳の血流を障害し、周囲の神経細胞に慢性的な酸素不足をもたらします。この状態が長く続くと、神経細胞が機能低下し、記憶や判断力の低下が進みます。

つまり、微小出血が「結果」ではなく「原因」としてアルツハイマー病の進行を促す可能性もあるのです。

睡眠時無呼吸症候群はアルツハイマー病の原因になり得る

睡眠時無呼吸症候群では無呼吸と呼吸再開を繰り返すため血圧が急激に上がったり下がったりします。

想像してみてください限界まで息を止めて呼吸を再開した時のあの感覚です。突然血の気がひくような感じです。

そういう状態を繰り返していると当然血管が痛めつけられアルツハイマー病の原因となる微小出血を引き起こすのです

どれくらい危ないのか

睡眠時無呼吸症候群の重症度が高いほど微小出血やが大きいという傾向が繰り返し報告されています。当然の如くリスクは年齢・血圧・糖代謝・脂質・喫煙歴・抗凝固薬使用などの組み合わせで大きく変動します。

では具体的にどのような程度の睡眠時無呼吸症候群の場合アルツハイマー病のリスクが高いといえるのでしょう

  • AHI(無呼吸低呼吸指数)中等症以上、

  • 夜間血圧非下降型(non-dipper)や早朝高血圧、

  • 脳梗塞や脳出血の既往がある

重症度分類は過去の記事を参照してくださいいびきと睡眠時無呼吸症候群との関連

こういった条件が重なると、新規の微小出血の出現や脳卒中・認知機能低下の将来リスクが高まります

兎にも角にも受診を

確かにいびき=睡眠時無呼吸症候群ではありません。しかし放置すると

いびき⇒睡眠時無呼吸症候群⇒高血圧⇒微小出血⇒アルツハイマー病

という未来が見えてきます。本当にいびき放置するという行為は非常に危険です。家族に指摘されたら、即座に医療機関を受診すべきです。いびきは早期であれば最新治療で改善できますし、当然睡眠時無呼吸症候群への移行を避ける事が可能です。重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の場合はCPAP治療を急いだほうが良いでしょう。