停電でCPAPが使えない|ポータブル電源の選び方・必要容量を完全解説【熊本地震・防災備え】|上野いびきクリニック
2025年7月28日、熊本県を最大震度7の地震が襲い、県内では最大約4万8,000戸が停電しました。この停電によって深刻な問題が生じました——毎晩CPAPを使用している睡眠時無呼吸症候群の患者さんが、突然治療を継続できなくなったのです。
ここで一つの根本的な問題を指摘したいと思います。人工呼吸器には法規制のもと内蔵バッテリーが義務付けられていますが、CPAPには同様の義務はありません。同じ「呼吸を支援する医療機器」でありながら、停電への備えに大きな格差が存在するのです。
この記事では、停電時にCPAPが使えなくなるリスク、人工呼吸器との制度的な差異、そして今すぐできる具体的な備え——ポータブル電源の選び方と代表的な製品の紹介まで、睡眠専門外来の立場から徹底的に解説します。
結論:この記事の要点
CPAPは停電で即座に使用不能になる医療機器であり、人工呼吸器と異なりバッテリー内蔵の義務がない。停電対策には①純正弦波出力 ②300Wh以上の容量(加湿器使用時は600Wh以上)を満たすポータブル電源が必要。USBのみのモバイルバッテリーは原則使用不可。Jackery・EcoFlow・Ankerなどの主要メーカー製品が信頼性の面でお勧めで、災害時に備えて事前に自分のCPAPで動作確認を行っておくことが不可欠。
上野いびきクリニックでは、保険診療による睡眠検査・CPAP管理、自費診療によるいびきレーザー治療など、状態に応じた選択肢をご案内しています。CPAP使用中の方の停電対策・機器相談も初診でお受けしています。
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院長監修記事
菅谷 和之
上野いびきクリニック 院長/麻酔科医
2万症例以上の全身麻酔経験を有する院長がいびき・睡眠時無呼吸の診療を中心に、患者様一人ひとりに合わせた治療を提供しています。【保険診療】上野いびきクリニック
本記事は院長 菅谷和之の監修のもと、停電時のCPAP使用継続問題、人工呼吸器との制度的格差、および災害・停電に備えたポータブル電源の正しい選び方について、正確な医療・技術情報をわかりやすく解説しています。
上野いびきクリニックでは、CPAP管理・停電対策の相談から、レーザー治療など保険外の選択肢まで、患者様の状況に応じた幅広い対応が可能です。
保険診療でしっかり検査・継続治療
- 簡易検査・PSG検査:睡眠の状態を精密に分析
- CPAP治療:中等症〜重症の無呼吸への標準治療
自由診療で根本改善・短期集中
- 最新いびきレーザー治療:切らない根本治療
- 医療ダイエット:減量による物理的な気道確保
※当院はいびき治療専門クリニックとして、保険・自由診療の両面から「止まらないいびき」の解決に全力を尽くします。
📋 この記事でわかること
- 熊本地震停電とCPAP患者が直面した現実
- 人工呼吸器にはあってCPAPにはない「内蔵バッテリー」問題
- 停電時にCPAPを使い続けるために必要な備え
- ポータブル電源の正しい選び方(純正弦波・容量の計算)
- 代表的なポータブル電源の比較と選定目安
- ポータブル電源以外の停電対策と注意事項
熊本地震停電とCPAP患者が直面した現実

2025年7月28日の熊本地震では、震度7を記録した宇城市で約1万2,000戸、震度6強の八代市で約1万4,000戸を含む、県内約4万8,000戸が停電しました。停電の復旧見込みは「確認中」とされ、一夜にして生活インフラが断絶した状況でした。
この状況で、CPAPを毎晩使用している睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、突然治療を継続できなくなりました。CPAPは電源がなければ動きません。コンセントに刺さっているだけの機器であり、停電と同時に治療も停止します。
⚠️ 停電でCPAPが止まると何が起きるか
- 気道への持続陽圧が失われ、睡眠中の無呼吸・低呼吸が再発する
- 重症のSAS患者では夜間の低酸素状態が繰り返され、心血管系への負荷が高まる
- 避難生活という精神的・身体的ストレス下での無呼吸再発は、特に影響が大きくなりやすい
- 復旧まで複数日かかる大規模災害では、数日間の治療中断が生じる可能性がある
SASは「治癒する疾患」ではなく「管理し続ける疾患」です。数日間の治療中断でも症状が元に戻り始め、長期的な健康管理に影響する可能性があります。災害時こそ、治療継続のための備えが必要です。
人工呼吸器にはあってCPAPにはない「内蔵バッテリー」問題

ここで、多くのCPAPユーザーが知らない重要な制度的事実を指摘します。
在宅で使用される人工呼吸器(HMV:在宅人工呼吸器)は、医療機器としての安全基準のもと、内部バッテリーの搭載が義務付けられています。停電が発生しても、内蔵バッテリーにより一定時間の動作継続が保証される設計になっています。
| 項目 | CPAP | 在宅人工呼吸器(HMV) |
|---|---|---|
| 主な対象疾患 | 睡眠時無呼吸症候群(SAS) | 神経筋疾患・慢性呼吸不全など |
| 内蔵バッテリー | ❌ なし(義務なし) | ✅ あり(義務付け) |
| 停電時の動作 | 即時停止 | 内蔵バッテリーで継続動作 |
| 使用者の停電対策 | 自己準備が必要 | 機器に一定の保護機能あり |
| 医療機器区分 | 管理医療機器 | 高度管理医療機器 |
💬 院長からの問題提起
SASは推定900万人以上が罹患するとされる国民病です。CPAPユーザーは日本に数十万人以上存在します。しかし、CPAPは人工呼吸器と異なりバッテリー内蔵が義務化されていないため、停電への備えはすべて患者自身の責任に委ねられています。日本は地震大国であり、停電リスクは誰もが抱えています。「医療機器でありながら停電に無防備」というCPAPの現状は、制度的に見直されるべき課題だと考えます。
停電時にCPAPを使い続けるために必要な備え
現状の制度を待つのではなく、今できる備えをしておくことが重要です。選択肢を整理します。
| 備えの方法 | コスト目安 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|
| ポータブル電源(本命) | 3〜8万円程度 | 最も現実的。AC出力・純正弦波が条件 |
| 車のシガーソケット+DCケーブル | 数千円〜 | 車がある場合の応急手段。機種専用DCケーブルが必要 |
| UPS(無停電電源装置) | 2〜5万円程度 | 停電を瞬時に感知して切り替え。持ち運び不向き |
| ガソリン発電機 | 5万円〜 | 屋外使用限定・騒音あり・燃料確保も必要で非現実的 |
実用性・携帯性・コストのバランスで、ポータブル電源が最も現実的な選択肢です。ただし、すべてのポータブル電源がCPAPに使えるわけではありません。次のセクションで詳しく解説します。
ポータブル電源の正しい選び方|CPAP使用の2大条件
条件1|「純正弦波(じゅんせいげんは)」出力であること
CPAPは精密な医療機器であるため、供給される電気の「波形」が非常に重要です。電気の出力波形には主に3種類あります。
| 波形の種類 | CPAPへの適合 | 特徴 |
|---|---|---|
| 純正弦波(正弦波) | ✅ 適合 | 家庭用コンセントと同等の波形。医療機器に安全 |
| 修正正弦波(擬似正弦波) | ❌ 不適合 | 誤作動・機器損傷のリスクあり。格安品に多い |
| 矩形波(くけいは) | ❌ 不適合 | 精密機器への使用は不可 |
📌 必ず確認すること
商品仕様に「純正弦波」または「正弦波」と明記されているものを選んでください。「修正正弦波」「擬似正弦波」と記載のある製品はCPAPには使用できません。Jackery・EcoFlow・Ankerなどの主要メーカー製品はほぼすべて純正弦波対応ですが、ノーブランドの格安品は要確認です。
条件2|必要な容量(Wh)を満たしていること
CPAPの消費電力は機種によって異なりますが、一般的にCPAPの消費電力は1晩(約8時間)で150Whから250Wh程度とされており、最低でも300Wh以上の容量を持つモデルを選ぶことが安心の目安です。
加湿器(ヒューミディファイア)を使用している場合は消費電力が大幅に増加します。AirSense 11のような据え置き型CPAPの場合、600Wh以上のバッテリー容量が必要と考えたほうがよいでしょう。
🔋 容量の目安(1晩8時間使用の場合)
- 加湿器なし・小型CPAP(AirMiniなど):300Wh以上が目安
- 加湿器なし・標準CPAP(AirSense 11など):400Wh以上が目安
- 加湿器あり・標準CPAP:600Wh以上が推奨
- 複数日の使用や避難長期化に備える場合:1,000Wh以上が安心
なお、ポータブル電源の実際の使用可能時間は「バッテリー容量(Wh)× 0.8 ÷ 消費電力(W)」で計算できます。電力変換ロスがあるため、容量の80%が実効値の目安です。自分のCPAPの消費電力は機器の銘板や取扱説明書で確認してください。
代表的なポータブル電源の比較と選定目安
現在市場で入手しやすく、信頼性の高い主要3メーカーの製品ラインナップを比較します。いずれも純正弦波対応済みです。
| 製品(目安) | 容量 | 定格出力 | CPAP適性・特徴 |
|---|---|---|---|
| EcoFlow RIVER 3 | 230Wh | 300W | 加湿器なし小型CPAP向け。超軽量・静音設計・UPS機能あり |
| Jackery 300 Plus | 288Wh | 300W | リン酸鉄電池で長寿命。小型CPAPの1〜2泊分に対応 |
| Anker SOLIX C800 | 768Wh | 800W | 標準CPAP+加湿器対応。耐衝撃性・静音性に優れる |
| Jackery 600 Plus | 632Wh | 800W | 加湿器ありの標準CPAP向け。60分急速充電・UPS機能搭載 |
| EcoFlow DELTA 3 Plus | 1,024Wh | 1,500W | 複数日の避難・家族分の機器も対応。ソーラー充電対応 |
| Jackery 1000 New | 1,070Wh | 1,500W | 長期避難・複数機器の同時使用も視野に入る大容量モデル |
💡 選ぶときの実践アドバイス
- 枕元に置く場合は静音性を確認:充電中・使用中のファン音が睡眠の妨げになる場合があります
- UPS機能付きを優先:停電を感知して瞬時に切り替わるUPS機能があれば、睡眠中の突然の停電にも対応できます
- ソーラーパネル対応を選ぶ:長期停電では充電手段の確保が重要。対応製品ならソーラーで継続充電が可能です
- 必ず購入前に自分のCPAPで動作確認を:店頭やレンタルで試してから購入するのが理想的です
ポータブル電源以外の停電対策と注意事項
車のシガーソケット+DCケーブルという選択肢
自動車がある場合、ResMedやフィリップスといった主要メーカーの製品であれば、専用のシガーソケットケーブルが販売されていることが多く、DCケーブルを使用することでバッテリーの持ちが劇的に改善する可能性があります。ACアダプター経由より電力変換ロスが少なく、車のバッテリーを電源として一晩のCPAP使用が可能なケースもあります。ただしエンジンをかけ続ける必要があるため、燃料管理と一酸化炭素中毒への注意が必須です。
「USBのみのモバイルバッテリー」はCPAPに使えない

スマートフォン充電用のモバイルバッテリーは、CPAPを使用するにはACまたはDC出力が可能なポータブル電源が必要であり、USBのみのモバイルバッテリーは適していません。USB出力(5V)ではCPAPの駆動電圧(一般的にAC100VまたはDC12V)を満たせず、接続しても動作しません。「大容量モバイルバッテリーがあるから大丈夫」という誤解は命取りになりかねません。
避難所でのCPAP使用について
避難所によっては医療機器用の電源タップが設置される場合があります。事前に自治体や避難所運営者に「CPAP使用者」として登録・申告しておくことで、優先的に電源を確保できるケースがあります。かかりつけのクリニックから「CPAP使用中」の証明書やデバイス情報を提供してもらえると、避難所での対応がスムーズになります。
上野いびきクリニックでできること
上野いびきクリニックはいびき・睡眠時無呼吸症候群を専門とする睡眠専門外来です。CPAP使用中の患者さんからの「停電時の対応をどうすればいいか」というお問合せも度々聞かれます。
使用されているCPAPの機種・消費電力の確認、ポータブル電源との適合性の相談、避難時の対応プランの検討など、日常の管理外来のタイミングでもご質問ください。また、まだCPAPを使用していない方で「自分がSASかどうか確認したい」という方も、在宅検査から始めることができます。
まとめ
熊本地震(2025年7月)の停電は、CPAPユーザーが治療継続のための備えを持っていないことへの警鐘となりました。人工呼吸器と異なり、CPAPには内蔵バッテリーの義務がなく、停電と同時に治療が止まります。この制度的な格差は今後の議論が必要な課題です。
個人でできる最も現実的な備えは純正弦波対応・必要容量を満たすポータブル電源の事前準備です。加湿器の使用有無によって必要容量は大きく異なるため、自分のCPAPの仕様を確認したうえで選択することが重要です。
「いざとなったら何とかなる」では、睡眠時無呼吸症候群の管理は成り立ちません。日本は地震大国です。今日からの備えが、明日の災害時に命を守ります。
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使用中のCPAPの消費電力確認・ポータブル電源との適合確認・避難時の対応プランまで、睡眠専門外来としてご相談をお受けしています。
よくある質問
Q.手持ちのスマホ用モバイルバッテリーでCPAPは動きますか?
動きません。スマートフォン充電用モバイルバッテリーのUSB出力(5V)では、CPAPの駆動に必要な電圧(AC100VまたはDC12V)を供給できません。CPAPにはAC出力またはDC出力付きのポータブル電源が必要です。
Q.自分のCPAPの消費電力をどうやって確認すればいいですか?
CPAPの銘板(本体底面または背面のラベル)、または取扱説明書の仕様欄に「最大消費電力(W)」が記載されています。かかりつけのクリニックに問い合わせても確認できます。
Q.停電が起きたとき、一晩くらいCPAPを使わなくても大丈夫ですか?
軽症の方であれば一晩の中断で深刻な影響が出ない場合もありますが、中等度〜重症のSASの方では、一晩の無呼吸再発でも心血管系への負荷が生じる可能性があります。「大丈夫」と自己判断せず、事前にポータブル電源を準備しておくことを強くお勧めします。
Q.避難所ではCPAPを使えますか?
避難所によって異なります。自治体によっては医療機器使用者向けの電源を確保している場合があります。事前に自治体の福祉部門や避難所担当窓口に「CPAP使用者」として登録・申告しておくと、優先的な対応を受けやすくなります。かかりつけのクリニックにCPAP使用の証明書を発行してもらえるか相談しておくことも有効です。
Q.ポータブル電源はどこで購入できますか?
Amazon・楽天市場・ヨドバシカメラ・ビックカメラなど、主要な通販・家電量販店で取り扱いがあります。購入前に「純正弦波対応」の記載を必ず確認し、自分のCPAPの消費電力に対して十分な容量のモデルを選んでください。可能であれば購入前に実機でCPAPとの接続テストを行うことをお勧めします。
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記事監修者

上野いびきクリニック院長 菅谷 和之
2004年に藤田医科大学医学部を卒業後、東邦大学医療センター大森病院で麻酔科医として勤務を開始。その後、全国の市民病院や自由診療クリニックで臨床経験を重ね、これまでに2万件以上の全身麻酔を担当。2020年には脊椎専門の「東京脊椎クリニック」を設立し、2025年からは上野いびきクリニックの院長として勤務
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