中枢性睡眠時無呼吸とは?閉塞性との違い・原因・検査・治療
「中枢性睡眠時無呼吸と診断された」「睡眠時無呼吸には種類があると聞いたが、違いがわからない」というご質問をいただくことがあります。
睡眠時無呼吸症候群の大半は、のどの気道が塞がる閉塞性です。一方、中枢性は、気道が塞がっているのではなく、呼吸をしようとする「指令」そのものが一時的に止まるタイプで、原因も治療の考え方も異なります。
この記事では、2万症例以上の麻酔管理経験を持つ上野いびきクリニック院長 菅谷が、中枢性睡眠時無呼吸とは何か、閉塞性との違い、原因、診断、治療の考え方を、ガイドラインや大規模試験でわかっている範囲とあわせて解説します。
結論:この記事の要点
閉塞性は、のどの気道が塞がって呼吸の努力はあるのに空気が通らない状態です。中枢性は、脳からの呼吸の指令が止まり、呼吸の努力そのものがなくなる状態で、心不全、脳血管障害、オピオイドなどの薬に関連して起こることがあります。見分けるには、呼吸の努力まで記録するPSG検査が基本です。治療は、閉塞性のCPAPが中心の考え方と違い、原因となる病気や薬の見直しが出発点です。心不全に伴うタイプでは、ASVという機器が死亡率を高めた大規模試験もあるため、専門医のもとで慎重に選ぶ必要があります。
上野いびきクリニックでは、自宅で受けられる簡易検査と保険診療のPSG検査(精密検査)で、無呼吸のタイプや重症度を調べています。入院は不要です。いびき・無呼吸が気になる方、息苦しさで夜中に目が覚める方は、まず検査と診察でご相談ください。
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院長監修記事
菅谷 和之
上野いびきクリニック 院長/麻酔科医
2万症例以上の全身麻酔経験を有する院長がいびき・睡眠時無呼吸の診療を中心に、患者様一人ひとりに合わせた治療を提供しています。【保険診療】上野いびきクリニック
本記事は院長 菅谷和之が、中枢性睡眠時無呼吸の仕組み、閉塞性睡眠時無呼吸との違い、原因、検査、治療の考え方について解説しています。
上野いびきクリニックでは、簡易検査・PSG検査で無呼吸のタイプと重症度を確認し、検査結果と症状にあわせて治療の方針をご提案しています。
保険診療でしっかり検査・継続治療
- 簡易検査:自宅でできる無呼吸のスクリーニング
- PSG検査:脳波を含めて評価できる精密検査(自宅で実施)
- CPAP治療:保険適応基準を満たす無呼吸への標準治療
自由診療で根本改善・短期集中
- いびきレーザー治療:検査で単純性いびきと確認された方に
- 医療ダイエット:体重増加が要因の場合の選択肢としても
※中枢性睡眠時無呼吸が疑われる場合は、心臓や脳などの評価も必要になるため、診療科との連携が必要になることがあります。
📋 この記事でわかること
- 中枢性睡眠時無呼吸とは?閉塞性との一番の違い
- 中枢性睡眠時無呼吸の原因|どんな人に起こる?
- 症状と見分け方|こんなときは心臓の確認も
- 診断|タイプを見分けるにはPSG検査が基本
- 治療|閉塞性とは「治療の軸」が違う
- CPAPを始めてから中枢性無呼吸が出ることがある?
中枢性睡眠時無呼吸とは?閉塞性との一番の違い
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、寝ている間に呼吸が止まる(または浅くなる)状態を繰り返す病気です。止まる「しくみ」によって、大きく閉塞性と中枢性に分けられます。
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)では、眠ると舌の付け根やのどの周りの筋肉がゆるみ、上気道が狭くなったり塞がったりします。胸やお腹は呼吸しようと動いているのに、空気が通らない状態です。
中枢性睡眠時無呼吸(CSA)では、気道は開いているのに、脳の呼吸中枢から呼吸の筋肉へ送られる指令が一時的に止まります。そのため、胸やお腹の動き(呼吸の努力)もなくなるのが特徴です。
| 閉塞性(OSA) | 中枢性(CSA) | |
|---|---|---|
| 止まるしくみ | 上気道が狭くなる・塞がる | 脳の呼吸の指令が一時的に止まる |
| 呼吸の努力(胸・お腹の動き) | ある(空気が通らないだけ) | ない、または著しく弱い |
| いびき | 多い | 伴わないこともある |
| 頻度 | 睡眠時無呼吸の大多数を占める | 少数(全体の1割未満とされる) |
| 肥満との関係 | 深い(体重の影響を受けやすい) | 小さいとされる |
| 背景にあることが多いもの | のどの構造、肥満、加齢など | 心不全、脳血管障害、腎臓病、オピオイドなどの薬、高地 |
| 治療の考え方 | CPAPなどでのどを開く | 原因の病気・薬への対応が出発点 |
このほかに、無呼吸の始まりは中枢性で、途中から閉塞性に変わる混合型もあります。いびきや無呼吸の指標であるAHIの見方はAHIとは?5・15・30で何が違う?で解説しています。
中枢性睡眠時無呼吸の原因|どんな人に起こる?
中枢性睡眠時無呼吸は、ほかの病気や薬に関連して起こることが多く、原因によっていくつかのタイプに分けられます。
| タイプ・原因 | 特徴 |
|---|---|
| 心不全に伴うもの(チェーンストークス呼吸) | 呼吸が「大きくなる→小さくなる→止まる」を周期的に繰り返す。心不全の方に多く、収縮機能が低下した心不全の約30%にみられるとの報告がある |
| 脳血管障害・腎臓病など | 脳卒中や脳幹の異常、腎臓病などに関連して起こることがある |
| 薬剤・物質に伴うもの | オピオイド(医療用の強い鎮痛薬など)が代表的 |
| 高地での周期性呼吸 | 標高の高い場所で眠るときに起こる。下山で改善することが多い |
| 原因がはっきりしないもの(特発性) | まれで、中高年に多い。家族内で見られることもあるとされる |
| 治療に伴うもの(治療関連性) | CPAPを始めたあとに中枢性の無呼吸が目立つようになるもの(第6章で解説) |
心不全の方では、睡眠中の呼吸の異常がとくに多く、収縮機能が低下した心不全では最大で約半数に睡眠呼吸障害がみられ、そのうち中枢性(チェーンストークス呼吸)は約3割とされています。中枢性の無呼吸は、心不全の入院や死亡のリスクと関連するとの報告もあります。
症状と見分け方|こんなときは心臓の確認も

症状は閉塞性と似ていて、自分では気づきにくいことが多い病気です。次のようなことがあれば、検査を考えるきっかけになります。
- 夜中に何度も目が覚める、眠りが浅い
- 息苦しさで目が覚める
- 日中の強い眠気やだるさ
- 睡眠中の呼吸停止を、家族に指摘された
- 朝の頭痛、集中力の低下
中枢性では、閉塞性と違っていびきがはっきりしないこともあります。そのため「いびきをかかないから大丈夫」とは言えません。
息苦しさ・むくみ・息切れがある方は、心臓の確認も
夜中に息苦しくて目が覚める、階段で息が切れる、足がむくむ、といった症状がある方は、睡眠の問題だけでなく、心不全などの心臓の病気が隠れていることがあります。中枢性睡眠時無呼吸が疑われる場合は、心臓や脳の評価も含めて、診療科と連携して調べることが大切です。
診断|タイプを見分けるにはPSG検査が基本

無呼吸のタイプを見分けるポイントは、「空気の流れ(気流)」と「呼吸の努力(胸・お腹の動き)」の両方を記録することです。
| タイプ | 気流 | 呼吸の努力 |
|---|---|---|
| 閉塞性 | 止まる | ある |
| 中枢性 | 止まる | ない |
| 混合型 | 止まる | 最初はなく、途中から出る |
この区別には、脳波・呼吸・酸素・胸腹部の動きなどを同時に記録するPSG検査(睡眠ポリグラフ検査)が基本になります。国際的な診断分類では、中枢性の無呼吸・低呼吸が1時間に5回以上あり、かつ全体の半分以上を占めることなどが目安とされています。
自宅でできる簡易検査は、主に気流や酸素飽和度などから無呼吸をとらえる検査で、機器によっては呼吸の努力の記録が限られ、タイプの区別が難しいことがあります。そのため、中枢性が疑われる場合は、PSG検査で詳しく調べる流れになります。
上野いびきクリニックでは、自宅でできる簡易検査と、保険診療のPSG検査(自宅で実施・入院不要)に対応しています。入院にかかる時間や費用の負担がなく、普段の寝室で検査を受けられます。くわしくはいびき・無呼吸の検査をご覧ください。
治療|閉塞性とは「治療の軸」が違う
閉塞性睡眠時無呼吸では、中等症〜重症に対して、気道を空気の圧力で開くCPAPが治療の中心です。中枢性では、まず原因となっている病気や薬への対応が出発点になります。そのうえで、タイプに応じて次のような方法が検討されます。
| 方法 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 原因への対応 | 心不全や脳血管障害の治療、オピオイドなど原因薬の見直し | 最優先。原因が改善すると無呼吸も改善することがある |
| CPAP | 空気の圧力で気道を保つ | 米国睡眠医学会(AASM)の2025年のガイドラインで、中枢性にも条件つきで提案。ただし根拠の確かさは低く、死亡率などを改善するとは示されていない |
| ASV(適応補助換気) | 呼吸に合わせて圧を自動調整する機器 | 専門施設で、対象を慎重に選んで行う。下の注意を参照 |
| 酸素療法 | 少量の酸素を投与 | 心不全に伴うタイプで提案されるが、根拠の確かさは低い |
| 薬(アセタゾラミド) | 呼吸の安定を助ける薬 | 心不全や高地でのタイプで提案。長期の安全性のデータは限られる |
| 横隔神経刺激 | 横隔膜の神経を刺激する植え込み型の装置 | ほかの治療で効果が不十分な場合の選択肢。植え込みに伴う合併症が約6〜8% |
心不全のASVは「誰にでも」ではありません
収縮機能が低下した心不全(左室駆出率45%以下)で、中枢性無呼吸が主体の方1,315人を対象としたSERVE-HF試験では、ASVによる治療で、心血管死亡が増えた(ASV群29.9%、対照群24.0%)と報告されました。その後の試験(ADVENT-HF)では、新しい機種で害は見られませんでしたが、生存率などの改善も示されていません。日本呼吸器学会のステートメントでも、この点を踏まえた慎重な使用が求められています。ASVは、必ず循環器・睡眠医療の専門医のもとで選ぶ治療です。
CPAPやASVの保険診療の条件は決まっており、病状や検査結果によって異なります。詳しくは、主治医または専門の医療機関でご確認ください。
CPAPを始めてから中枢性無呼吸が出ることがある?

閉塞性睡眠時無呼吸でCPAPを始めたあとに、中枢性の無呼吸が目立つようになることがあります。「治療関連性中枢性睡眠時無呼吸(複雑性睡眠時無呼吸)」と呼ばれます。
| わかっていること | 数字・内容 |
|---|---|
| 出現する割合 | 報告によって幅があり、約0.56〜18%と報告されている(対象の違いによる) |
| 初回のCPAP調整時 | 1,286人の検討で、約6.5%にみられた |
| 続けていくとどうなるか | 多くは続けるうちに解消する。再調整した42人のうち33人(約79%)で解消した |
| 解消しない場合 | 圧の設定の見直しや、機器の変更、薬などを検討する |
つまり、CPAPを始めて検査結果に中枢性の無呼吸が出ても、多くは慌てて中止する必要はありません。ただし、自己判断で使用をやめず、データを確認しながら主治医と調整していくことが大切です。CPAPのデータの見方はCPAPのセルフチェックでも解説しています。
上野いびきクリニックでできること
上野いびきクリニックは、いびき・睡眠時無呼吸症候群を専門とする「睡眠障害内科」です。自宅でできる簡易検査と、保険診療のPSG検査(精密検査)で、無呼吸のタイプや重症度を確認します。閉塞性睡眠時無呼吸には、保険診療のCPAP治療をはじめ、状態に応じた方針をご提案します。
「睡眠時無呼吸と言われたが、タイプがわからない」「夜中に息苦しくて目が覚める」という方も、お気軽にご相談ください。中枢性が疑われる場合は、心臓や脳などの評価が必要になるため、診療科との連携が必要になることがあります。
まとめ|タイプを見分けて、原因から考える
閉塞性は「気道が塞がる」、中枢性は「呼吸の指令が止まる」という違いがあり、呼吸の努力があるかどうかで見分けます。中枢性は、心不全や脳血管障害、オピオイドなどの薬に関連して起こることがあり、原因への対応が出発点です。心不全に伴うタイプでは、ASVの使用に慎重な判断が必要です。
タイプの見分けには、呼吸の努力まで記録するPSG検査が基本です。いびきがなくても、夜中の息苦しさや日中の眠気がある方は、まず検査で確認してみてください。
上野いびきクリニック院長の書籍「いびきを最新治療で治す」(Amazon 売れ筋ランキング 医学一般 1位 臨床内科 1位 家庭医学・健康 2位)でも詳しく解説しています
よくある質問
Q.中枢性睡眠時無呼吸と閉塞性睡眠時無呼吸は、何が違うのですか?
閉塞性は、のどの気道が塞がり、呼吸の努力はあるのに空気が通らない状態です。中枢性は、脳からの呼吸の指令が止まり、呼吸の努力そのものがなくなる状態です。睡眠時無呼吸の大多数は閉塞性で、中枢性は少数です。
Q.中枢性睡眠時無呼吸の原因は何ですか?
心不全に伴うチェーンストークス呼吸が代表的で、脳血管障害や腎臓病、オピオイドなどの薬、高地での睡眠が関連することもあります。原因がはっきりしないものや、CPAPを始めたあとに目立つようになるタイプもあります。
Q.いびきをかかなくても、中枢性睡眠時無呼吸の可能性はありますか?
あります。中枢性では、気道が塞がっていないため、いびきを伴わないこともあります。夜中の息苦しさ、日中の眠気、家族からの呼吸停止の指摘があれば、検査をおすすめします。
Q.自宅の簡易検査で、中枢性か閉塞性かわかりますか?
簡易検査は主に気流や酸素飽和度から無呼吸をとらえる検査で、機器によっては呼吸の努力の記録が限られ、タイプの区別が難しいことがあります。中枢性が疑われる場合は、呼吸の努力まで記録するPSG検査で詳しく調べるのが基本です。
Q.中枢性睡眠時無呼吸にCPAPは使えますか?
2025年の米国睡眠医学会(AASM)のガイドラインで、条件つきで提案されています。ただし、根拠の確かさは低く、死亡率などの改善は示されていません。心不全に伴う場合のASVは、慎重な判断が必要です。治療は、原因の病気や薬への対応が出発点です。
Q.CPAPを始めたら中枢性の無呼吸が出ました。やめたほうがよいですか?
自己判断でやめないでください。治療関連性の中枢性無呼吸は、多くは続けるうちに解消するとされています。データを確認しながら、主治医と圧の設定や機器を調整していきます。
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記事監修者

上野いびきクリニック院長 菅谷 和之
2004年に藤田医科大学医学部を卒業後、東邦大学医療センター大森病院で麻酔科医として勤務を開始。その後、全国の市民病院や自由診療クリニックで臨床経験を重ね、これまでに2万件以上の全身麻酔を担当。2020年には脊椎専門の「東京脊椎クリニック」を設立し、2025年からは上野いびきクリニックの院長として勤務
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