睡眠時無呼吸影響で危険運転疑い、書類送検のニュースについて
2026年8月6日、共同通信をはじめとする各社が報じたニュースが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療に携わる私たちに、あらためて重い問いを突きつけました。
重度の睡眠時無呼吸症候群を患いながら、治療機器「CPAP」を使わずに就寝した影響で居眠り運転をし、人身事故を起こしたとして、警視庁は同日、自動車運転処罰法違反の危険運転致傷容疑で会社役員の男性(44)を書類送検した。
この事件は特別な出来事ではありません。SASによる居眠り運転事故は、2003年の山陽新幹線居眠り運転士の事例をきっかけに社会問題として認識されてから20年以上が経った今も、繰り返し起き続けています。
この記事では、事件の背景にある医学的なリスク、現行制度の実態、そして「運転に携わる人こそSAS検査を積極的に受けるべきだ」という当院からの提言を、院長 菅谷和之の立場からお伝えします。なお、提言部分はあくまで当院の専門的見解であり、現行法制度そのものを説明するものではない点にご留意ください。
結論:この記事の要点
未治療の重度SASは、事故リスクを一般ドライバーの約2.5倍に高めるとされる(Am Rev Respir Dis 1988年の研究より)。現行制度では、運転免許の更新・取得時に日中の過眠に関する「自己申告」の質問票があり、事業用自動車(バス・タクシー・トラック)事業者にはSAS検査が「推奨」されているが、いずれも法的な検査義務ではない。この”自己申告と推奨”にとどまる現状が、今回のような事故を防ぎきれない一因になっていると当院は考える。検査は現在、簡易検査を中心に在宅で手軽に受けられる時代になっており、運転に携わる人は「指摘されるまで待つ」のではなく、自ら積極的に検査を受けるべきというのが当院からの提言。
上野いびきクリニックでは、運転を仕事や日常で行う方のSAS検査・治療を積極的にお受けしています。保険診療による在宅簡易検査から、精密検査・CPAP治療まで、状態に応じて丁寧にご案内します。
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院長監修記事
菅谷 和之
上野いびきクリニック 院長/麻酔科医
2万症例以上の全身麻酔経験を有する院長がいびき・睡眠時無呼吸の診療を中心に、患者様一人ひとりに合わせた治療を提供しています。【保険診療】上野いびきクリニック
本記事は院長 菅谷和之の監修のもと、SASと交通事故に関する報道を踏まえ、現行制度の実態と、運転に携わる方への検査推奨について、専門的見解を交えて解説しています。提言部分は当院の見解であり、法制度そのものの説明とは区別してお読みください。
上野いびきクリニックでは、運転を仕事とする方・日常的に車を運転する方のSAS検査を積極的にお受けしています。保険診療による在宅簡易検査・精密検査から、CPAP・レーザー治療まで対応します。
保険診療でしっかり検査・継続治療
- 簡易検査:自宅で手軽に受けられる一次スクリーニング
- PSG(精密検査):より詳細な重症度評価
- CPAP治療:中等症〜重症の無呼吸への標準治療
自由診療で根本改善・短期集中
- 最新いびきレーザー治療:切らない根本治療
- 医療ダイエット:減量による物理的な気道確保
※事業用ドライバーの方の産業医対応・診断書発行についてもご相談いただけます。
📋 この記事でわかること
- 今回の事件の概要
- SASと交通事故——なぜこれほど危険なのか
- 現行制度の実態:「自己申告」と「推奨」にとどまる現状
- 【院長提言】運転に携わる人にはSAS検査を積極的に受けてほしい理由
- 検査は今、在宅で気軽に受けられる時代
- 運転に携わる方向けのセルフチェックリスト
今回の事件の概要
2026年8月6日、警視庁は重度の睡眠時無呼吸症候群を患いながら、治療機器「CPAP」を使用せずに就寝した影響で居眠り運転をし、人身事故を起こしたとして、会社役員の男性(44)を自動車運転処罰法違反の危険運転致傷容疑で書類送検したと発表しました(共同通信配信)。
この事件で重要なのは、男性が「重度のSASと診断されていながら、CPAPを使用していなかった」という点です。つまり、病気の存在自体は把握されていたにもかかわらず、治療を継続しないまま運転を続けてしまったということです。これは特殊な事例ではなく、SAS診療の現場で繰り返し見られる構図でもあります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と交通事故——なぜこれほど危険なのか

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の人が交通事故を起こす頻度は、無呼吸のない人と比べて約7倍、一般ドライバーと比べて約2.5倍にのぼるとされています(Am Rev Respir Dis 1988;138:337-340より改変)。睡眠が細切れになり深い眠りが確保できないことで、日中に強い眠気が生じ、運転中に本人も気づかないまま数秒間意識が飛ぶ「マイクロスリープ」が起こりやすくなるためです。
2003年、山陽新幹線での事例

日本でSASと運転の危険性が広く社会問題として認識される契機となったのが、2003年2月26日に発生した山陽新幹線の事例です。乗客約800人を乗せた「ひかり126号」の運転士が福山〜岡山間で約8分間居眠り状態となり、自動列車制御装置(ATC)が停車位置の手前で自動的に列車を止めたことで大事には至りませんでした。運転士は当初「病気ではない」と説明していましたが、その後の精密検査でSASと診断されています。この事例をきっかけに、国土交通省を中心に交通事業者の運転従事者に対するSAS対策の連絡会議が設置されました。今回の事件は、それから20年以上が経過してもなお、同じ構図の事故が起き続けていることを示しています。
現行制度の実態:「自己申告」と「推奨」にとどまる現状
「SASのように事故リスクが明確に指摘されている病気であれば、運転者は必ず検査を受ける制度になっているのでは」と思われるかもしれません。しかし実際の制度は、次のように本人の自己申告や事業者の努力に委ねられている部分が大きいのが実情です。
| 対象 | 現行制度の内容 |
|---|---|
| 一般ドライバー | 2014年の道路交通法改正により、免許の取得・更新時に「質問票」への回答が必要。「十分な睡眠を取っているのに週3回以上日中に眠り込んだことがあるか」という項目はあるが、SAS検査の実施義務はなく、あくまで自己申告。虚偽申告により事故を起こすと罰則の対象になる。 |
| 事業用自動車運転者 (バス・タクシー・トラック) |
国土交通省の「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」でSAS検査は「推奨検査」と位置づけられている(令和7年7月改訂版でも同様)。実施事業者は増加傾向にあるが、国交省自身が「決して浸透したとは言い切れない」と課題を認めており、法的な検査義務ではない。 |
つまり、今回のように「診断は受けていたが治療を継続していなかった」というケースだけでなく、「そもそも検査を受けたことがなく、自分がSASだと気づいていない」ドライバーも相当数存在すると考えられます。自己申告と推奨にとどまる現行制度は、こうした”気づいていない層”を捕捉しきれない構造的な限界を抱えています。
【院長提言】運転に携わる人にはSAS検査を積極的に受けてほしい理由
💬 院長からの提言
2万件以上の全身麻酔管理で気道と呼吸を診てきた立場から申し上げます。SASによる事故は、加害者になる本人だけでなく、何の落ち度もない被害者を生む病気です。事業用自動車の運転者はもちろん、日常的に車を運転するすべての方に対して、SAS検査を実質的に必須とし、重度と診断されながら未治療の場合には運転免許の更新を認めないくらいの、踏み込んだ制度設計があってもよいと、私は考えています。これは現行法の内容ではなく、臨床現場からの一つの提言です。
この提言の背景には、次のような考えがあります。
- 「自己申告」は病識のない人を救えない:質問票による自己申告制度は、症状を自覚している人にしか機能しません。いびきや無呼吸は自分では気づきにくく、家族の指摘がなければ一生気づかないまま運転を続ける人も少なくありません。
- 治療すれば安全に運転を継続できる病気である:SASは「見つかったら免許停止」の病気ではなく、CPAPなどの治療でコントロールできれば運転を続けられます。検査のハードルを下げることは、ドライバーを排除することではなく、安全に運転を続けてもらうための入り口です。
- 事故が起きてからでは遅い:今回の事件のように、事故が起きてはじめて未治療が問題化するのでは、被害者を防げません。事故の”前”に検査を受けることの価値を、もっと社会全体で共有すべきだと考えます。
検査は今、在宅で気軽に受けられる時代

「検査を受けるのが面倒」「入院してまで調べるのは大げさ」——そう感じている方もいるかもしれませんが、その認識はすでに過去のものになりつつあります。SASの検査は現在、簡易検査であれば自宅で機器を装着して眠るだけで受けられるのが標準的です。より詳細な重症度を調べるPSG(精密検査)についても、在宅で実施できる検査機器が普及してきています。仕事や運転業務で忙しい方でも、通院の負担を最小限に抑えながら検査を受けられる環境が整ってきています。
検査の流れや「簡易検査」と「PSG」の違いについては、「いびき・睡眠時無呼吸症候群の検査とは?『簡易検査』と『PSG』をわかりやすく解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
運転に携わる方向けのセルフチェックリスト
仕事や日常で運転をする方は、以下の項目を確認してみてください。複数当てはまる場合は、SASの可能性を考慮し、早めの検査をおすすめします。
🔍 運転に携わる方向け SASセルフチェック
- 運転中、信号待ちなどの短時間でもウトウトしてしまうことがある
- 十分な時間眠ったはずなのに、日中強い眠気を感じる
- いびきをかいている、または家族から指摘されたことがある
- 朝起きたときに頭が重い、疲れが取れていないと感じる
- 運転免許更新時の質問票で「該当する」に近いと感じた項目がある
- 健康診断でBMIや血圧について指摘を受けたことがある
上野いびきクリニックでできること
上野いびきクリニックは、いびき・睡眠時無呼吸症候群を専門とする睡眠専門外来です。耳鼻咽喉科ではなく、2万例以上の全身麻酔を経験した麻酔科医が気道・呼吸管理の専門的な知識をもとに、SASの診断・治療を行っています。
運転を仕事とする方、日常的に車を運転する方からのご相談も多くお受けしています。検査結果に基づく診断書の発行や、事業者・産業医との連携が必要な場合のご相談にも対応可能です。「大げさかもしれない」と感じても、まずは検査で現状を把握することが、ご自身と周囲の安全を守る第一歩になります。
完全予約制ですが当日予約も可能です。忙しい方こそ、早めのご相談をおすすめします。
まとめ
CPAP未使用による居眠り運転で人身事故を起こし、危険運転致傷容疑で書類送検された今回の事件は、SASと診断されながら治療を継続しない場合のリスクを、あらためて突きつけるものでした。SASの人の交通事故リスクは一般ドライバーの約2.5倍とされ、2003年の山陽新幹線の事例以来20年以上にわたり指摘され続けてきた問題です。
それでも現行制度は、一般ドライバーへの自己申告、事業用自動車運転者への検査推奨にとどまっており、法的な検査義務にはなっていません。当院では、この現状を踏まえ、運転に携わる人こそSAS検査を積極的に受けるべきであり、重度の未治療SASについてはより踏み込んだ制度的な対応があってもよいと提言します。
検査は今、自宅で手軽に受けられる時代になっています。「まだ大丈夫」ではなく、「事故を起こす前に」——ご自身と、道路を共有するすべての人のために、検査という一歩を踏み出してみませんか。
上野いびきクリニック院長の書籍「いびきを最新治療で治す」(Amazon 売れ筋ランキング 医学一般 1位 臨床内科 1位 家庭医学・健康 2位)でも詳しく解説しています
よくある質問
Q.SASと診断されたら、運転免許はすぐに取り消されますか?
いいえ。SASと診断されたこと自体で直ちに免許が取り消されるわけではありません。CPAPなどの治療により日中の眠気が改善し、安全な運転に支障がないと確認できれば、運転を継続できます。問題となるのは、診断を受けても治療を継続せず、危険な状態のまま運転を続けてしまうことです。
Q.運転免許更新の質問票で正直に答えると不利になりますか?
正直に申告すること自体が不利益になる制度ではありません。むしろ、症状を隠して事故を起こした場合は罰則の対象になり得ます。該当する症状がある場合は、申告のうえで医師の診断・治療を受け、安全に運転できる状態を確認することが、ご自身にとっても周囲にとっても望ましい対応です。
Q.事業用ドライバーではなく、一般の運転者でも検査を受ける意味はありますか?
あります。現行制度では事業用自動車の運転者に検査が推奨されている一方、一般ドライバーへの検査の呼びかけは十分とは言えません。しかし今回のような事故は事業用・自家用を問わず起こり得ます。日常的に運転をする方であれば、いびきや日中の眠気に心当たりがなくても、一度検査を検討する価値があります。
Q.在宅の簡易検査だけで診断は確定しますか?
簡易検査は重症度をおおまかに把握するためのスクリーニング検査で、結果によっては、より詳しい情報が得られるPSG(精密検査)が必要になる場合があります。精密検査も自宅で行うことができます。検査の種類と流れについては、当院の関連記事もご参照ください。
上野いびきクリニックまでお気軽にご相談ください【当日予約可】
📞0120-899-930
〒110-0005 東京都台東区上野4−8−8 上野シルクビル 5階

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We provide medical services for international patients. Please check our English website for details on how to visit our clinic.
記事監修者

上野いびきクリニック院長 菅谷 和之
2004年に藤田医科大学医学部を卒業後、東邦大学医療センター大森病院で麻酔科医として勤務を開始。その後、全国の市民病院や自由診療クリニックで臨床経験を重ね、これまでに2万件以上の全身麻酔を担当。2020年には脊椎専門の「東京脊椎クリニック」を設立し、2025年からは上野いびきクリニックの院長として勤務
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