いびき治療:歯ぎしり(食いしばり)に対する治療(咬筋ボツリヌストキシン注射)とは
「歯ぎしりがひどいと言われた」「朝起きると、あごがだるい」――これは、当院のいびき外来に来られる患者様に付随する症状として、非常に多いものです。
歯ぎしり(食いしばり)は、歯の問題やストレスの問題として扱われがちですが、いびきや睡眠時無呼吸と併存していることも少なくありません。夜間の無意識の噛みしめが続くと、咬筋(エラの筋肉)が硬く張り、あごの不調や歯のトラブルにつながります。
この記事では、2万症例以上の麻酔管理経験を持つ上野いびきクリニック院長 菅谷が、歯ぎしり(食いしばり)に対する治療のひとつ「咬筋ボツリヌストキシン(ボトックス)注射」を中心に、効果、リスク、費用、組み合わせ治療の考え方を、研究でわかっている範囲とあわせて解説します。
結論:この記事の要点
睡眠時無呼吸の方の約半数に、睡眠中の歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)が併存していたという大規模な報告があります。咬筋ボツリヌストキシン注射は、噛む筋肉の出力を下げて、あごや歯への負担を和らげる治療で、効果は3〜6か月ほどが目安、永続しません。一方で、歯ぎしりの回数そのものが減るかどうかの根拠は、まだ十分ではありません。そのため、ナイトガードや、いびき・無呼吸の検査と治療を組み合わせる「総合設計」が大切です。
上野いびきクリニックでは、保険診療による睡眠検査・CPAP管理、自費診療によるいびきレーザー治療・咬筋ボツリヌストキシン注射など、状態に応じた選択肢をご案内しています。ご自身に合う治療を確認したい方は、まずは初診でご相談ください。
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院長監修記事
菅谷 和之
上野いびきクリニック 院長/麻酔科医
2万症例以上の全身麻酔経験を有する院長がいびき・睡眠時無呼吸の診療を中心に、患者様一人ひとりに合わせた治療を提供しています。【保険診療】上野いびきクリニック
本記事は院長 菅谷和之が、歯ぎしり・食いしばりの原因、いびき・睡眠時無呼吸との関係、咬筋ボツリヌストキシン注射の効果とリスク、組み合わせ治療の考え方について解説しています。
上野いびきクリニックでは、いびき・睡眠時無呼吸の検査から、歯ぎしり・食いしばりによる咬筋の負担への対応まで、状態にあわせた方針をご提案しています。
保険診療でしっかり検査・継続治療
- 簡易検査:自宅でできる無呼吸のスクリーニング
- PSG検査:脳波を含めて評価できる精密検査(自宅で実施)
- CPAP治療:保険適応基準を満たす無呼吸への標準治療
自由診療で根本改善・短期集中
- いびきレーザー治療:検査で単純性いびきと確認された方に
- 医療ダイエット:体重増加が要因の場合の選択肢としても
- 咬筋ボツリヌストキシン注射:歯ぎしり・食いしばりによる筋肉の負担を和らげる選択肢
※歯ぎしり・食いしばりの背景に睡眠時無呼吸が隠れていないかを、検査で確認したうえで治療方針を決めます。
📋 この記事でわかること
- 歯ぎしり・食いしばりは、いびき・睡眠時無呼吸と関係する?
- 咬筋ボツリヌストキシン注射とは|仕組みと、研究でわかっていること
- 治療の流れと、効果を実感できる時期
- 副作用・リスクと、受けられない方
- 効果は永続しない|継続の目安と費用
- ボトックスだけでは足りない?「総合設計」の考え方
歯ぎしり・食いしばりは、いびき・睡眠時無呼吸と関係する?
歯ぎしり(ブラキシズム)には、日中の食いしばりと、睡眠中の歯ぎしり・噛みしめ(睡眠時ブラキシズム)があります。睡眠中は自分で気づけないため、本人に自覚がないまま、症状だけが進んでいくことが多いのが特徴です。

夜間に噛みしめが続くと、噛む力の主役である咬筋(こうきん)が緊張して硬くなり、次のようなトラブルにつながることがあります。
| 出やすい症状 | どんな状態か |
|---|---|
| 朝のあごのだるさ・重さ | 起床時に、あごのこわばりや疲れを感じる |
| こめかみの痛み・緊張型頭痛 | 側頭筋や咬筋の緊張が頭痛として現れることがある |
| 歯のすり減り・欠け・知覚過敏 | 歯に強い力が繰り返しかかる |
| 詰め物・被せ物の破損 | 同じ場所に負担が集中する |
| 顎関節症の悪化 | あごの関節や筋肉への負担が積み重なる |
では、歯ぎしりと、いびき・睡眠時無呼吸にはどんな関係があるのでしょうか。睡眠時無呼吸の成人914人を対象に、睡眠ポリグラフ検査(PSG)で調べた研究では、約49.7%に睡眠時ブラキシズムが併存していました。つまり、いびき・無呼吸のある方では、歯ぎしりも一緒に見られることが珍しくないということです。
「無呼吸を治せば歯ぎしりが止まる」とは限りません
同じ研究では、歯ぎしりに伴う筋活動と無呼吸の重症度(AHI)との間に、直接の関連は見つかりませんでした。一方で、筋活動の約86%は、睡眠中の短い覚醒(アローザル)と時間的に重なっていました。歯ぎしりと無呼吸は併存しやすいものの、一方を治せばもう一方が必ず治るわけではないと考えられています。
だからこそ、「歯ぎしりの治療」と「いびき・無呼吸の検査」の両方を考えることが大切です。いびきや無呼吸の検査についてはいびき・無呼吸の検査、重い無呼吸の目安はAHI30以上の重症の無呼吸の記事をご覧ください。
咬筋ボツリヌストキシン注射とは|仕組みと、研究でわかっていること

ボトックスというと、美容のしわ取りを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、もともとは眼瞼痙攣、顔面痙攣、斜頸、過活動膀胱など、神経・筋肉の病気の治療薬として長く使われてきた医薬品です。美容の分野でも、咬筋を小さくする「小顔」目的の注射として古くから用いられています。
基本的な仕組みは、神経から筋肉へ送られる「動け」という信号を一時的に遮断し、過剰な筋収縮を抑えることです。歯ぎしりの治療では、強く噛みしめたときにエラの部分で盛り上がる咬筋に、少量ずつ薬剤を注射します。
では、歯ぎしりに対する効果は、研究でどこまでわかっているのでしょうか。近年の系統的レビューとメタ解析(プラセボ対照試験5件・101人)では、次のようにまとめられています。
| 見る項目 | わかっていること |
|---|---|
| 咬筋の筋活動(筋電図) | ボツリヌストキシンで低下したと報告(根拠の確かさは「低〜中程度」) |
| 歯ぎしりの回数・症状(質問票や臨床評価) | 改善がはっきり示されたのは6件中1件のみ。根拠の確かさは「非常に低い」 |
| 安全性 | 軽く一時的な副作用が報告され、重い副作用の報告はなし(追跡は2週間〜6か月と短い) |
別の系統的レビューでは、ボツリヌストキシンは噛む力(咬合力)と痛みを減らし、効果は4週以内に現れて5〜8週ごろにピークとなり、最長で24週ほど続くと報告されています。ただし、24週より先の効果や、繰り返し注射した場合の成績はわかっていません。
「歯ぎしりを止める治療」ではありません
現時点の根拠から言えるのは、ボトックスは咬筋の力を弱めて、あごや歯への負担を和らげる治療だということです。歯ぎしりという行為そのものを止めたり、回数を減らしたりすることが確実に示されているわけではありません。個人差も大きいため、効果の感じ方は人それぞれです。
治療の流れと、効果を実感できる時期
施術はシンプルで、両側の咬筋に、数か所ずつ注射します。処置時間は数分程度で、麻酔を使わなくても耐えられる痛みのことがほとんどです。注射後すぐに変化が出るわけではなく、次のような経過をたどるのが一般的です。
| 時期 | 一般的な経過 |
|---|---|
| 注射直後〜数日 | すぐには変化を感じにくい。腫れや内出血が出ることがあるが、多くは数日以内に自然に消える |
| 3〜7日ごろ〜 | 「噛みしめが軽くなった」と感じ始める方がいる |
| 2〜4週ごろ〜 | 効果が強まる時期。研究では5〜8週ごろにピークとの報告もあり、個人差がある |
| 3〜6か月ほど | 効果が緩やかに続く。その後は徐々に元に戻っていく |
「噛めなくなるのでは?」と心配される方もいますが、通常の食事に支障が出ることはほとんどありません。多くの方は「硬いものが少し噛みにくい」と感じる程度です。筋肉の緊張が和らぐことで、朝のあごのこわばり、顎関節の違和感、緊張型頭痛が軽くなる方もいます。また、咬筋の張りが落ち着くことで、フェイスラインがすっきり見えるなど、副次的な変化を感じる方もいます。
副作用・リスクと、受けられない方
施術後に腫れや内出血が出ることがありますが、多くは数日以内に自然に消えます。日常生活は、基本的に通常どおり過ごしていただけます。まれに、次のような症状が出ることがあります。
- 注射部位の圧痛
- 一時的に、噛む力が弱くなったように感じる
- 笑顔の左右差など、軽い違和感
これらのほとんどは一過性ですが、症状の出方には個人差があります。気になる症状があれば、早めにご相談ください。
次の方は、原則として治療を見合わせます
妊娠中・授乳中の方は、原則として治療を見合わせます。また、重症筋無力症などの神経・筋肉の病気がある方や、過去にボツリヌストキシンでアレルギー反応が出た方、現在使っている薬がある方は、事前に必ず医師へお伝えください。
効果は永続しない|継続の目安と費用
ボトックスの効果は永続的ではありません。神経の末端は時間とともに再生するため、快適な状態を保つには、数か月ごとの再注射が前提となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 診療区分 | 自由診療(保険適用外) |
| 効果の持続 | 3〜6か月ほどが目安(個人差あり) |
| 再注射 | 効果が薄れてきた時期に、数か月ごとに検討 |
| 費用の目安 | 両側の咬筋で、1回あたり3〜6万円前後が一般的な目安(使用量やクリニックの方針により変動します) |
当院の料金は料金ページをご確認いただくか、お問い合わせください。
ボトックスだけでは足りない?「総合設計」の考え方
ボトックスは有用な選択肢のひとつですが、単独よりも、組み合わせたほうが症状は安定しやすいと考えられています。当院では、次の3つを「防具」「エンジン調整」「道路整備」にたとえてご説明しています。
| 役割 | 治療 | 目的 |
|---|---|---|
| 防具 | ナイトガード(マウスピース) | 歯のすり減り・欠けを物理的に防ぐ |
| エンジン調整 | 咬筋ボツリヌストキシン注射 | 噛む力そのものを弱めて、筋肉と関節の負担を減らす |
| 道路整備 | いびき・睡眠時無呼吸の検査と治療(体位の工夫、体重管理、鼻呼吸の確保、CPAP、上気道の治療など) | 夜間の覚醒や口呼吸が減り、歯ぎしりが起こりにくい環境をつくる |
ナイトガードの前に、無呼吸の確認を
歯を守るナイトガードは大切ですが、睡眠時無呼吸のある方では、スタビライゼーションスプリントの使用で無呼吸が少し悪化したという小規模な研究報告があります(10人の検討で、AHIの平均上昇は1.4回/時。影響は小さく、確定的ではありません)。いびきや無呼吸が疑われる場合は、先に睡眠検査で確認することをおすすめします。
いびきや無呼吸が背景にある場合には、当院ではいびきレーザー治療(Dual Deep Thermia)などの上気道への治療を組み合わせることもあります。呼吸の環境を整えることで、夜間の覚醒が減り、歯ぎしりが落ち着く可能性はありますが、歯ぎしりが確実に止まるとは限りません。レーザーの波長の違いはいびきレーザーの1波長と2波長の違いで解説しています。
上野いびきクリニックでできること
上野いびきクリニックは、いびき・睡眠時無呼吸症候群を専門とする「睡眠障害内科」です。自宅でできる簡易検査と、保険診療のPSG検査(精密検査)で、いびき・無呼吸の有無を確認します。そのうえで、保険診療のCPAP治療、自由診療のいびきレーザー治療や咬筋ボツリヌストキシン注射など、状態に応じた方針をご提案します。
「朝のあごの不調が続く」「マウスピースだけでは改善しない」「いびきや無呼吸も指摘されている」という方は、お気軽にご相談ください。
まとめ|歯ぎしりは「歯」だけでなく「睡眠」と「呼吸」も見る
歯ぎしり・食いしばりは、睡眠時無呼吸の方の約半数に併存するなど、睡眠や呼吸と関わりのある症状です。咬筋ボツリヌストキシン注射は、噛む筋肉の出力を下げて、あごや歯への負担を和らげる治療で、効果は3〜6か月ほど。永続せず、歯ぎしりの回数が減る根拠はまだ十分ではありません。
だからこそ、ナイトガードによる歯の保護、ボトックスによる筋肉の負担軽減、いびき・無呼吸の検査と治療を、同時に整える「総合設計」が大切です。当院では、検査を踏まえて、一人ひとりに合った治療をご提案します。
上野いびきクリニック院長の書籍「いびきを最新治療で治す」(Amazon 売れ筋ランキング 医学一般 1位 臨床内科 1位 家庭医学・健康 2位)でも詳しく解説しています
よくある質問
Q.歯ぎしり・食いしばりとボトックス注射の関係を教えてください。
ボトックス(ボツリヌストキシン)は、神経から筋肉への信号を一時的に遮断して、筋肉の力を弱める医薬品です。歯ぎしり・食いしばりの治療では、咬筋に少量ずつ注射して、噛む力による負担を和らげます。歯ぎしりそのものを止める治療ではなく、あごや歯への負担を減らす治療です。
Q.ボトックスの効果はどのくらい続きますか?
一般的に3〜6か月ほどが目安で、永続しません。研究でも、効果は4週以内に現れて5〜8週ごろにピークとなり、最長で24週ほど続くと報告されています。快適な状態を保つには、数か月ごとの再注射が前提です。
Q.ボトックスで歯ぎしりは治りますか?
咬筋の筋活動を下げることは示されていますが、歯ぎしりの回数や症状が減るという根拠は、現時点では十分ではありません。「歯ぎしりを止める治療」ではなく、「筋肉と歯への負担を和らげる治療」とお考えください。ナイトガードや、いびき・無呼吸の対策との組み合わせが大切です。
Q.歯ぎしりといびき・睡眠時無呼吸には関係がありますか?
睡眠時無呼吸の成人914人の研究では、約49.7%に睡眠時ブラキシズム(睡眠中の歯ぎしり)が併存していました。ただし、歯ぎしりに伴う筋活動と無呼吸の重症度(AHI)との直接の関連は見つかっていません。併存しやすいものの、一方を治せばもう一方が必ず治るわけではありません。
Q.ナイトガードを使っても大丈夫ですか?
歯を守るために大切ですが、睡眠時無呼吸のある方では、無呼吸が少し悪化したという小規模な報告があります。いびきや無呼吸が疑われる場合は、先に睡眠検査で確認することをおすすめします。
Q.費用はどのくらいですか?保険は使えますか?
咬筋ボツリヌストキシン注射は自由診療(保険適用外)です。両側の咬筋で1回あたり3〜6万円前後が一般的な目安ですが、使用量やクリニックの方針によって変わります。当院の料金は料金ページをご確認ください。
上野いびきクリニックまでお気軽にご相談ください【当日予約可】
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記事監修者

上野いびきクリニック院長 菅谷 和之
2004年に藤田医科大学医学部を卒業後、東邦大学医療センター大森病院で麻酔科医として勤務を開始。その後、全国の市民病院や自由診療クリニックで臨床経験を重ね、これまでに2万件以上の全身麻酔を担当。2020年には脊椎専門の「東京脊椎クリニック」を設立し、2025年からは上野いびきクリニックの院長として勤務
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