腰椎変性側弯・後弯症(腰曲がり)
側弯症とは学童の検査などでもおなじみの項目で背骨が左右に弯曲した状態で、背骨自体のねじれ を伴う疾患です。よく小児の病気であると認識されがちです
しかし変性側弯・後弯症は小児期に側弯がないにも関わらず加齢に伴って椎間板や椎間関節が変性して椎体を支える力が弱くなり、脊柱が側方や後方に曲がってくる(側弯・後弯)状態です。
脊柱は正常な状態では頚椎と腰椎が前弯といって前に出た形、胸椎が後弯といって後ろに出た形をしています。
(注)当院では小児の側弯に対する検査・治療は行っておりません。
この弯曲によって、しなやかなバネのような感じで上体を前に倒したりすることができるのです。
この背骨(脊柱)が、異常に曲がってしまうことを脊柱変形といいます。
曲がる方向のタイプは
- 前腕症:前に曲がる
- 後弯症:後ろに曲がる
- 側弯症:横に曲がる
に分類されます
この中で最も頻度が高く問題となるのが後弯症です
後弯症は
腰の前弯が後弯になるタイプ
胸の後弯がさらに強い後弯になるタイプ
首の前弯がなくなって前に倒れるタイプ(首下がり)
そして、これらが合わさったタイプがありますが、
何らかの症状をともなって受診する患者さんの多くが腰(腰椎)の後弯症です。
原因
年齢が40~50代を過ぎてくると加齢性の変化がおこり、特に椎間板(軟骨)が弱くなってつぶれたりずれたりすることで背骨(脊柱)の変形が進みます。
また、骨粗しょう症性の圧迫骨折によって曲がってくる場合も非常に多いです。
後弯が多い理由として、日常生活での姿勢が影響していると言われています。
日常の動作では、ほとんどが自分の前方で作業をする(ものを持ったり、拾ったりなど)姿勢になります。
すると、体を前に倒すことが多くなり、背骨(脊椎)の前方に負荷がかかりやすく
そのために後弯になる人が多いのではないかと考えられています。
特に閉経後の女性に多いと言われています。
症状
初期症状は腰痛ですが、骨棘などの椎体変形や脊柱のねじれ(回旋変形)を伴ってくると神経根や馬尾を圧迫して、足のしびれ、痛みや筋力低下が生じる場合も少なくありません。
また、進行すると腰痛が悪化したり、体幹のバランスも悪くなり、長時間同じ姿勢でいることが困難になり日常生活に支障を生じます。
合併症として特に後弯症の方において逆流性食道炎が多いと言われています。逆流性食道炎は胃液が食道に逆流し食道に炎症を起こします
症状としては初期はむねやけ程度ですが重症化すると食道粘膜にびらんや潰瘍をきたし、激しい痛みとなることがあります。
診断検査
腰の後弯の場合は明らかに腰曲がり状態になっているためよくわかりますが、側弯は外観上分からないケースもあります
いずれもレントゲン撮影によって診断できます
また神経症状を伴う場合、脊髄の圧迫の程度を調べるためMRIが有用です
治療法
高齢者に多いという事でやはり治療の選択はまず初めに痛みのコントロールとリハビリから開始します
それらの治療でも改善せず症状が悪化する場合、特に神経症状が出現していきた場合は脊柱を矯正する必要があり
手術による固定術を選択します。
保存療法
コルセットによる局所の安静
痛みのコントロール
内服治療
痛みを和らげる薬(消炎鎮痛剤)、末梢血管を広げて神経の血流を増やして症状を和らげる薬(リマプロスト)
中枢神経に作用して過剰に興奮している神経を鎮める薬(プレガバリン、オピオイドなど)等で症状が改善する場合があります。
症状が強い場合はオピオイドという麻薬系の強い痛み止め使う場合があります
神経ブロック
保存治療で改善が見られない場合
神経根ブロック
痛みのでている神経を確実に捕らえて、そこに局所麻酔薬を打つ方法です。
硬膜外ブロック
背部痛・腰痛だけでなく、足も腰も両方痛むという人には有効な方法です。
この注射はペインクリニック外来で行います。
背中から注射する胸部硬膜外ブロックと、腰の方から入れる腰部硬膜外ブロックがあります。
どちらも長い針を神経の通っている骨の穴(脊柱管)まで入れて局所麻酔やステロイド薬を注入する方法です。
この注射をした後は、下肢に力が入らなくなるので30分くらいは休んでから帰ってもらいます。
当院でも痛みの専門外来をペインクリニック専門医が行っております。
リハビリテーション
保存療法と同時におこなうことがあります
背筋を鍛えてそれまで使われなかった筋肉を使えるようになり、結果的に筋力が増えることが期待できます。
手術療法
リハビリテーションや薬物治療でも効果がない場合は手術の適応となります。
全身麻酔を行った後うつ伏せの状態で手術を行います。
金属のスクリューで脊柱を矯正する方法です
この手術は多椎間にわたる椎体固定術と言いますが文字通り多くの部分を固定するため
かなり手術手技が複雑となります。多くの症例経験をもつ医師に手術してもらう事をお勧めします。
また固定するだけでは脊柱を矯正できない場合人工の椎間板を側方から挿入する手術(XLIF)が適応となる場合もあります。
手術法
- 多椎間後方固定術
- XLIF
術後経過
手術後翌日より起床して、胸腰椎コルセットを装着し歩行器を用いての歩行を開始します。
数日は腰背部の痛みがありますが、過度の安静は薦められません。
- 入院:10-14日目程度
- 自宅療養:2週間程度
- 通院:3-12ヶ月程度